岡山市「路面電車岡山駅前広場乗り入れ計画」分析

費用便益比の推移と比較に関する調査レポート

1. はじめに

岡山市の路面電車岡山駅前広場乗り入れ計画は、当初は経済的に非常に妥当とされていましたが、事業費の大幅な増加により、その経済的合理性が著しく損なわれています。本レポートでは、事業費増額の推移を整理し、増額修正後の費用便益比を再計算した上で、歩行者デッキ案との比較を行い、この顛末における責任の所在を明確にします。

2. 事業費増額の推移

岡山市「路面電車岡山駅前広場乗り入れ計画案調査検討会」の資料によると、路面電車の平面乗り入れ案(3電停案-2)の当初の概算事業費は9.9億円でした。しかし、この事業費は時間の経過とともに大幅に増加しています。

事業費増額の時系列

この事業費の増加は、岡山市民への十分な説明なく進められたとされています。政策形成ブログによれば、「岡山市民への説明なきまま『43億円』に膨らみ」、さらに「倍増(約86億円)試算」が報じられるに至りました。

3. 費用便益比の再計算

費用便益比(B/C)は公共事業の経済的妥当性を評価する重要な指標です。当初計画では、路面電車の平面乗り入れ案の費用便益比は3.0と非常に高い値でした。一方、歩行者デッキ案は直線形で1.56、円形で0.83とされていました。

費用便益比の変化

再計算の方法は以下の通りです:

  1. 当初の便益(B)= 9.9億円 × 3.0 = 29.7億円と仮定
  2. 新しい費用便益比(B/C)= 29.7億円 ÷ 88億円 = 0.34

この結果、費用便益比は当初の3.0から0.34へと約89%も低下し、経済的妥当性の基準である1.0を大きく下回っています。

4. 歩行者デッキ案との比較

歩行者デッキ案と路面電車案を比較すると、現在の状況では歩行者デッキ案が経済的に優れていることが明らかです。

経済的妥当性の比較

費用便益比 経済的妥当性
路面電車案(当初) 3.0 非常に高い
路面電車案(現在) 0.34 非常に低い
歩行者デッキ案(直線形) 1.56 高い
歩行者デッキ案(円形) 0.83 中程度

事業費の比較

事業費 路面電車案(現在)との差額
路面電車案(現在) 88億円 -
歩行者デッキ案(直線形) 20.6億円 -67.4億円
歩行者デッキ案(円形) 23.1億円 -64.9億円

路面電車案の現在の事業費は、歩行者デッキ案の約3.8~4.3倍に膨れ上がっており、経済的合理性の観点から見て、歩行者デッキ案(特に直線形)が明らかに優位です。

5. 責任の所在

事業費の大幅な増加と費用便益比の著しい低下に関する責任の所在は、主に以下の三者にあると考えられます。

主要な責任主体

岡山市長(大森市長)

最終的な政策決定者として、事業費増加と費用便益比低下に対する最も重い責任を負います。政策形成ブログでは「大森市長をリコールしなければ岡山の県都は衰退を続ける」「大森市長への損害賠償額100億円超の可能性」という厳しい批判がなされています。

岡山市行政当局

計画立案、事業管理、情報公開の各段階での責任があります。当初計画の甘さ(事業費の過小評価)や、事業費増加の抑制・適切な見直しを行わなかった責任が問われます。

岡山市議会

行政に対する監視・審議機能を十分に果たさなかった責任があります。政策形成ブログでは「陳情第32号を否決した岡山市議会議員の不作為の罪は重く、議員の価値はゼロ」という批判もなされています。

6. 結論と提言

岡山市「路面電車岡山駅前広場乗り入れ計画」は、事業費の大幅な増加により、当初の経済的合理性を完全に失っています。当初9.9億円だった事業費は88億円に膨れ上がり、費用便益比は3.0から0.34へと約89%も低下しました。

現在の状況では、歩行者デッキ案(特に直線形、費用便益比1.56)が経済的に優れており、公共資金の効率的な使用という観点からは、路面電車案から歩行者デッキ案への計画変更が合理的な選択と言えます。

責任の所在については、最終的な政策決定者である岡山市長(大森市長)に最も重い責任があり、同時に岡山市行政当局の計画立案・事業管理責任、岡山市議会の監視・審議責任も問われるべきです。

今後の対応に関する提言

  1. 路面電車案の継続是非を含めた抜本的な見直し
  2. 歩行者デッキ案(特に直線形)への計画変更の検討
  3. 「百条委員会」の設置などを通じた事実関係の調査と責任の明確化
  4. 市民への説明責任の履行と情報公開の徹底
  5. 公共事業評価システムの改善と第三者評価の導入

公共資金の効率的な使用と市民への説明責任の観点から、岡山市は早急に本計画を見直し、経済的合理性に基づいた判断を行うべきです。